日々えらぶもの

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どシンプルなグラスの問題提起/VISION GLASS NO PROBLEM展に行ってきました

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天気が荒れ気味の10月1日、御徒町へ。TimeOut Tokyoの記事で興味を持った「VISION GLASS」の展示を観に行きました。

ネジの商社とか金属パーツのお店が並ぶ一角、このへんかなあ…と一度通り過ぎて戻って、控えめな入口を発見。

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階段とエレベーターを使って6階の会場へ。真っ白に塗られた部屋に入ると、

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すんごい量!およそ5000個のグラスによるインスタレーション。きらきらと宝の山のようで見惚れます。

 

このVISION GLASSはインドの理化学機器メーカーBOROSIL社の製品。主にビーカーやフラスコといった実験用ガラス製品を生産しているメーカーだそうで、とにかくシンプルな筒型の形状と耐熱性を身上としています。

特に耐熱性については、直火OKで一人前のごはんも炊けてしまう(!)、オーブンでお菓子などを焼く型にもなる(!)と、にわかには信じがたい特徴があり。そのあたりも気になってお伺いしました。ここはその輸入をしている会社の事務所/倉庫/直営店(不定期営業)。

 

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製造工程の図解が吊られたパネルと、その下に並ぶ「市場に出さないグラス」の主な種類。上下交互に見ていって、ほおー、この工程でこのキズが…と検品気分で眺めはじめます。が、すぐ面白くなります。

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キズのネーミングがもう、ひとつひとつ可愛くて。

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特にこの「ロゴ位置不備」なんて、グラス底面に印字されるはずのロゴがこんな位置に。「要因:人為的ミス / オートメーション化により絶滅の可能性」とのこと。もうチャームポイントにしか見えません。

 

来場者の少ない時間だった事もあり、スタッフの方々が色々解説してくださるのも楽しい。その説明や展示の言葉のセンスからにじみ出る愛情というか思い入れに触れていると心地良くなってきます。

そしてほかの展示も見たのち、出口近くに置かれた文章に目が向きます。 

VISION GLASS を製造するインドのBOROSIL社では日本向け専門の検品チームを揃え、特別厳しい基準を設けています。インドでそれほど慎重に選ばれているにもかかわらず、日本の市場には出し控えるものがまだまだあるということです。日々、私たちの目の前に積まれてゆく「市場に出さないグラス」はインドの価値観と日本のそれとの狭間で行き場を失ったグラスであり、その量の多さは狭間の大きさを示しているのです。

厳しさによって生まれる価値があります。厳しさによって生まれる無駄があります。2年間で私たちの倉庫に溜まったVISION GLASS NO PROBLEM を眺めることで、物の価値に対する自分自身のものさしについて、考えてみたいと思います。

 

----- 「NO PROBLEM | VISION GLASS」より

ピカピカ/キズあり、新品/アンティークやヴィンテージ、 ノープロブレムの線引きやどれを選び取っていくのかはひとそれぞれ。同じ製品にもこんなに違いが生まれる。ここに並べられたグラスの数々、わたしにはとても魅力的でした。

 

最後に購入できるグラスがあるか尋ねると「はい!この中からご希望ありましたら定価でお買い上げ頂けます」

え!この中から…! 再度、宝の山とじっくり向き合います。

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購入品については、また別のエントリで。

10/6 追記 : こちらに書きました

finir.hateblo.jp

 

グラスを見つめ続けた数十分間は驚きと発見の多い楽しい時間でした。

展示は10月7日まで、入場無料です。

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